記念樹

昔、彼が子供だったころ
小さな木を卒業記念に植えた
なぜか今ごろになってそんなことが
気になってしょうがない。
そんなものが残っているかどうかも
わからないまま
 
彼はふと足を伸ばして、昔住んでいた
母校のあたりを訪ねると
すでに景色はまったく異なっていた
記憶も定かではなく、コンビニやガソリンスタンドは
見覚えのないものばかりだった
なんのための記念樹だったのか。
あのとき、何を残そうとしていたのか
老いた足はただただ記憶の糸を捜しあぐねるのだった。