最後に見た夢

そういえば
同じような事があったなぁ
彼女は春先の満月を眺めながら
そう思った。

これから きっとあの頃と同じように 
閉じ忘れられた窓から流れ込む風が
空っぽだと言うことを
思い知らされるんだ。

しばらくはそういうことなんだ
何気ない毎日の中で
一つの景色として
溶け込んでいればいい

触角を折られ 羽根を切られ
手足をもがれた今は
擬態として風景に
溶け込むしかない。

彼女は目を閉じて そう決めた。