イースターエッグ

その年の秋、
バンドは結成以来最大の危機を迎えていた。
 
無邪気な笑顔とハイトーンの愛すべきメンバーが
不慮の事故で他界してしまった
 
バンドは絶頂期であり、まわりの大人たちは
このドル箱を失うことに恐怖を感じた。
 
とりあえず
バンドは休みを取ることにして
この件は公開しないということにした。
 
そんな中
事務所を訪れた、アーティスト志向のベルギー人に
白羽の矢が向けられる。
 
彼に多少の修正を施して、
しばらく死んだメンバーの代役を演じることをお願いした。
賢い若者は困惑したもののダメもとで
この滑稽な依頼に挑戦することにした。

ただ見た目が似ていても
ステージに上がるのは危険と事務所は判断し
今後バンドは生演奏は行わず、レコードに力を注ぐ
という苦し紛れの方針を作った。
 
メンバーはすっかりやる気をなくしていたので
次のレコードからはプロデューサーの趣味で
ロックバンドよりもライトミュージックな趣向に変わってしまった。
 
メンバーもそれにあわせて鬘をつけ髭を蓄えて
新しいイメージを楽しんでいたが
 
なぜか結果オーライで世間はこの変化を
好意的に受け止めてくれたので
しばらくはプロデューサーの趣味でバンドは
継続され、ロックバンドの影は微塵に消えた。
 
そんなこんなで
さらにバンドに興味を失ったオジリナルメンバーは
次々と脱退を試みたが、代役のベルギー人とプロデューサーの
好演によりしばらくは寝たふりをきめこむことにした。
 
ある日ベルギー人はギャラの取り分で
事務所ともめてバンドから去っていった。
 
ようやくメンバーはバンドから開放されたのだった。