継承者

ある朝、バス停で彼は若い男から
弟子入りを打ち明けられた
 
普通の会社員である彼にとっては
意味がわからんと気味悪がって
その場を離れた
 
が彼に心酔する男はどうしても
弟子入りさせて欲しいと何度も
身近に現れて懇願した
 
しぶしぶOKしたものの
弟子などを採ったことのない彼は
当惑した。すると男はその日のうちに
住み込みと称して彼のマンションに転がり込んできた
 
それからの男は、彼の身の回りの世話を懸命に始めた。
たまに彼の仕事場にも現れては
彼の仕事っぷりを熱心に見ているという具合だった。
 
彼はよく意味がわからなかったが
新しい環境にしだいに慣れていった。
 
そんなある日、男はスーツを着込んで会社に現れた
男は彼の前で丁寧に頭をさげ、真打になったことを表明した
今日から二代目として精進していきますとも付け加えた。
 

彼はその日 引退勧告を受けた。。
 

会社にとっては安い給与で同じ能力の人材が手に入り
若者にとってはピンポイントで望む職場を
手に入れられることから、これは新しい就職の形であると
社会面は報じている。