1992年

少し早めに会社をふけた彼は
改札を通り抜けて
田園風景が広がる車窓を
ぼんやりと眺めていた。
 
車内は混み合うことなく
ゆったりと時間は流れて
 
隣の女学生は心地よく
まどろみの中にいる。
 
そんな平和な丘陵の向こうに
巨大な宇宙船のような
白いドームが忽然と現れた。
 
いつのまにこんなものが
できたのだろう
 
しばらく帰りが遅かった彼には
その近未来の景色が異様に思える。
 
きっと何年かたてば
このちぐはぐな風景も
見慣れたものになるのだろうか
 
と思っていると
次の駅にたどり着く
 
それにしても、
原っぱばかりのこの駅に
なぜ新幹線が停まるか
 
すべては未来に向けての準備
なのだろうと彼は思った。