拡散と凝縮

その深い空に手を注ぎ
うんと背を伸ばせば
彼女の影もうんと背を伸ばす
 
春の光は淡く輝き
彼の白いシャツの背中に戯れ
拡散しては凝縮する
 
潮の香りは二人の間をすりぬけて
ときには出会いの言葉をたどり、ときには
別れの言葉をさぐる
 
時間だけが、ここに留まり、心の距離を静かに見つめる
 
その雲が茜色に染まるとき
結ばれた指だけが それだけがすべての二人。