2025-01-01から1年間の記事一覧
子供だった彼は炬燵で丸まってテレビを見てた 大阪や東京の大きな市場が賑わっている 寒い台所で母は御節と格闘している 玄関には標縄を父が貼り付けた 正月を迎える準備は万端である 夕方からはまたテレビに釘付けになる 世界のマジックショーとか レコ大と…
今夏は暑かった 下宿先の本郷までの帰り道 近くの寺の鐘の音が鳴れば 夕焼けに染まる東京の町は幻想的で美しい 江戸と近代が混じり合う不思議な世界 市電が行き交う大通りからひとたび 狭い路地に入れば忘れられたもののふ達が 潜んでいるような気がする 突…
里に降りた小熊が二匹 人の手で殺された 母熊は以前、里に連れて行ったことを後悔した 美味しい物や珍しいものがたくさんある 遊びたい盛りの小熊にとっては楽園だ 今年は食糧不足で、掟を破って里に降りる者が 後をたたない そしてみな殺された 長はやりき…
田園調布にあるその家は 駅から少し離れた住専地域にある 200坪の敷地に100坪の屋敷が建ち 道路に面した西側は楡の木が並び 閑静な住宅地によく似合う ただこの家には玄関がなく 窓も開かない為、中に入る事ができない 電気もガスも上下水道も接続されていな…
梅雨の晴れ間に 家のポストに同窓会の案内が届いた。 差出人の名前は思いつかなかったが 結婚して苗字が変わったのかもしれない 夏休みを利用して彼は帰省をする事にした 会場は地元の中華料理店の広間を貸し切った ものだった。 ざわざわした会場で昔の顔を…
2年と9ヶ月余り アルベルトは不思議な夢を見た。 水の惑星に降り立った彼は 小さな微生物から始まった 生命の進化について毎夜学んだ 目を持ち手足や羽根を伸ばし 捕食を覚え道具を使い 言語で共有し自他を識別した彼らは お互いの家に火を放ち 悲しみと怒り…
彼は子供の頃から 人の教えに逆らった 人と異なる方法で解をみつけたい 俺は他とは違うのだと 恐れるものは何もなかった 友人の多くは彼を遠ざけたが 中には彼の独創性に興味を 持つものたちも現れた 研究者として長年 彼は独創的な論文を発表して評価された…
国会にてゾンビに対する規制法案が 議論された そもそもゾンビは規制の対象となるか という話になりかけたが 日常生活に存在する以上は何かしらの 規制が必要であるという見解の一致に 与野党ともにたどり着いた では害獣や害虫の括りでどうか という案が出…
彼はこの世界は結局 どこへ行っても だいたい同じようなものだと 思ってた 政治は腐敗し刹那的に 時代を動かす。 なにも変えようとしないし なにも変わらない 有楽町の古い雑居ビルに旅行会社がある 彼は興味半分でその扉を押した 無人の店内の壁には海外旅…
春の訪れとともに、静かな月は 重なる雲に青く影を落とした 私は息を止めて空を見ていた 私は聴覚を失っていたが 音楽が夜空に流れていることに気づいた するとなんだか 空の向こうから私を見ている人が いるような気がしてくる これまでの本当の私を知って…
ありとあらゆるサービスに人口知能が投入され、人間に適合するようにシステムは進化してきた。 ここまで来るとそれが当たり前であり 人工知能は明らかに生活に溶け込み過剰なサポートに人類は甘やかされてきた頃人類は創造する事ができなくなってしまった。 …
ノスタルジアと呼ばれる都市には65歳以上の住民が住んでいる 表向きは普通の都市と変わりないが人口知能やアンドロイドによる高齢者向けの福祉が充実しており手厚いサービスを受ける事が出来る ノスタルジアは現代より30年前の時代に設定されているのでシニ…